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【無人島69日目】Antony & The Johnsons "I Am A Bird Now" [CD]

I Am a Bird Now

I Am a Bird Now

  • アーティスト: Antony and the Johnsons
  • 出版社/メーカー: Spunk
  • 発売日: 2005/02/01
  • メディア: CD


69日目。どこでも好きな場所に住んでいいよ!って言われたらどこに住みます? 沖縄とかハワイとか、常夏ココナッツな場所も捨て難いけれど、今のボクならニューヨークを選ぶかも知れません。死ぬ前に一度は住んでみたい街・紐育(←最近使いません)。ウォーホール。バスキア。キース・へリング。アートやデザインを生業とする人間として、60〜70年代を駆け抜けた天才たちが遺してくれた、めくるめく混沌にどっぷり身を浸して暮らしてみたい。え? ニューヨークはもうそんな場所じゃないってか? いやいや、そんなことはないっす。だって未だにこんなミュージシャンが生息してるんすよ。恐るべし大紐育。

元「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のルー・リードが、数年前にニューヨークで出会った無名のミュージシャン、アントニー・へガーティ。彼の歌声とそのソングライティング力に感銘したルーが、自身のアルバムにゲスト参加させたのが転機となり、それまで無名だったアントニー率いるバンド「アントニー&ザ・ジョンソンズ」は徐々に注目され始めます。

ルーの多大なるバックアップと、「同胞」であるボーイ・ジョージ、ルーファス・ウェインライト、デヴェンドラなど、才能あるミュージシャンたちのサポートを受け、05年にリリースしたセカンドアルバム「I Am A Bird Now」が、イギリスの音楽賞「マーキュリー・アワード」で最優秀アルバムを獲得。この賞のおかげでアルバムは、それまでの20倍のセールスを記録し、アントニーは一躍時の人になりました。

しかし聴くとすぐ分かるのですが、男でありながら女性の心を持つアントニー君。彼のユニセックスな歌声や、書き綴る歌詞の内容は、批評家からは高い評価を受けていたものの、メディアからは「これまでレコーディングされたものの中で最も同性愛者的」などと辛口なコメントをされていました。

だから、ちょっと色モノ的な印象で、手にとるのに抵抗のある人もいるかも知れません。ボクも名前は聞いていたものの、実際にCDに手を伸ばすところまではいってなかったんです。先日「Joan As Police Woman」というミュージシャンのアルバムを買い、このアーティストが実は「アントニー&ザ・ジョンソンズ」のメンバーだというライナーノーツを読んで、どうにも気になったのでようやっとCDを購入してみました。

聴いてみると、これが素晴らしいアルバムなんですな。驚くほど美しく、完成度が高い。ロックというよりは室内楽にも似た、計算されたアレンジ。憂いとかすかな震えを包したファルセット・ボイス。飾りをギリギリまで削ぎ落としたストレートなリリック。その、まるで聴覚だけでオペラを観せようと試みているような音楽は、ブルージーでありながら、ポップアートの鮮烈さを秘めています。ほんの息継ぎひとつの間に、男性から女性へと早替りするアントニーのボーカルは、ジャズ・ボーカリストの大御所、ニーナ・シモンを彷彿とされる表現力の高さがあります。

他人の言葉や視線など気に止める必要はない。どんなに嘲笑されても揶揄されても、自分のやりたいものを作れ。オリジナルを求め続ける同胞と、オリジナルを愛でる仲間で、共にここに集おう。それがきっとウォーホールが作った「ファクトリー」の意義。その思想は今も根付いていて、未だにこんな不思議なミュージシャンを育てる土壌が残っているんだと思うんです。恐るべし大紐育。


タグ:2007年
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