【無人島81日目】椎名林檎 × 斎藤ネコ "平成風俗" [CD]
- アーティスト: 椎名林檎×斎藤ネコ, コマエノオーケストラ, ノラネコオーケストラ, アノヨノオーケストラ, ナダタルオーケストラ, マタタビオーケストラ
- 出版社/メーカー: 東芝EMI
- 発売日: 2007/02/21
- メディア: CD
81日目。ちょっと前に、CDってジャケ買いしちゃうーってな話を書きましたが、もうひとつ音楽とは関係ないところでグッと惹かれてしまうのは、芸名。例えばボクの敬愛するバンド「野狐禅」のボーカルは「竹原ピストル」。かっこブー！ ピストルっすよ？ 英語のくせになんか大正レトロな雰囲気を持つこの単語を、自分の芸名に選んじゃうところが好き。あと、地味だけど邦楽インディーズの女性アーティストに「ノラオンナ」って人がいて、この人のアルバムもほぼ芸名買いしました。ノラオンナって、やっぱ漢字で野良女？ 野性的！（でもアルバム超いいんです。今度紹介します）。で、今回はこれまた素敵な芸名を持つ、リンゴちゃんとネコちゃんのコラボアルバムの紹介です。
リンゴちゃんこと椎名林檎の４年振りのソロ名義アルバム「平成風俗」が今週リリースされました。映画「さくらん」のサントラから派生したこのアルバムは、ソロ名義といえども「×」がついていて、ネコちゃんこと「斎藤ネコ」とのコラボ作品となっています。
リンゴちゃんは、もうみなさんよくご存知だと思うのですが、ネコちゃんって一体誰？ 名前はかわいらしいくせに、写真見るとツルッパなオッチャンなんですけど？って、失礼なことを思いつつ検索。
斎藤ネコはヴァイオリニスト兼ピアニストにして、アレンジャー。宇多田ヒカル、YUKI、南こうせつ、谷山浩子、聖飢魔II、石川さゆりなど、ジャンルを超えたミュージシャンの作曲やアレンジ、はたまたアルバムプロデューサーとして活躍してきた人です。舞台やCMの音楽なども数多く手掛け、自身がリーダーを務めるの弦楽四重奏バンド「斎藤ネコカルテット」でも活動中の、職人的マルチ音楽家。御年47歳。
今回のアルバムは、ネコちゃんの一声（たぶんニャー）で集まった「国宝級」のオーケストラ演奏者が、全曲ラグジュリーな演奏で、リンゴちゃんを新たな世界に迎え入れています。オーケストラっつうと、どうも仰々しいイメージがありますが、彼らのプレイは実に淫靡できらびやか。本当に腕のあるミュージシャンにしか歩けない、一歩間違うと下品に転がるギリギリの境界線を、上手になぞっているドキドキ感があります。ところどころにフィーチャーされるネコのヴァイオリンソロも、実にエロい。ヴァイオリンってこんなセクシーな音なのかと、耳からウンコが出ました（←汚い）。ずーっと聴いていても飽きのこない音の気持ち良さは、リンゴちゃんお気に入りのエンジニア・井上雨迩（うに）の力量でしょう。ウニ？！ 名前がウニって、これもスゴイな。
そんな素晴らしい才能たちにサポートされ、でもやはりその誰よりも優秀なのがリンゴちゃんでしょう。ソングライターとしての才能はもちろん、今回のアルバムではそのシンガーとしての力量が、驚くほど磨き上げられていることに気付かされます。初期の頃のトガッた印象は薄れ、包容力さえ感じさせる堂々とした歌いっぷり。そして相変わらずの隠しきれない狂気、みたいなもの。28歳という実年齢が、ようやく自分の作る世界に上手く重なってきた感じなんでしょうか。
個人的には「ハツコイ娼女」にやられまくりましたが、先行シングルになった純平兄ぃやんとのデュエット曲「この世の限り」もいい。出だしだけ日本語で、あとは全部英語詞なんですが、またまた気になったので著作権度外視でムリクリ超訳してみました。最初は古語を用いて林檎調にしてみようと思ったのですが、なかなかどうして難しいのでございます。当然か。残念断念。フツーの訳ですが、こんな感じです。
「この世の限り」
この世に限りはあるの？
もしも果てが見えたなら
如何やって笑おうか愉しもうか
もうやり尽くしたね
じゃあ何度だって忘れよう
そしてまた新しく出逢えれば素晴らしい
然様なら
初めまして
（↓ここからがムリクリ超訳）
この世に限りはあるの？
すぐそこに見えてしまったら
抱きしめてくれたらうれしいけど
それでも泣いてしまいそう
ねえ？どのレコードをかけようか？
この世の限りの時に
この胸の痛みを
取り去ってくれる歌はどれ？
そうね、その時のために
私はたくさん歌を作ろう
古きも新しきも無い
ただ日の光へ向けて歌おう
その歌にあなたは微笑み
私たちは幸せになれるの
いつでも振り返り
この気持ちに戻れればいい
古きも新しきも無い
あなたが別れを告げる時にも
あなたが私だったら、
この夕暮れにあなたは誰？
まだ顔は見えるけど
もう闇はすぐそこまで来ているの
過去からの幻が浮かび
私たちの思い出を映し出す
笑顔や愛や笑ったこと
ねえ、怖いよ
そうね、その時のために
私はたくさん歌を作ろう
古きも新しきも無い
ただ日の光へ向けて歌おう
その歌にあなたは微笑み
私たちは幸せになれるの
そうね、その時のために
私はたくさん歌を作っておこう
古きも新しきも無い
あなたは私を見つめ
初めまして、と言う
此処にいてもいいですか？
あなたといてもいいですか？
54日目に紹介したピーター・ガブリエルの「Here Comes The Flood」にも似た世界観。素敵です。純平兄ぃやんの声もセクチーです。
ちなみにリンゴちゃんの本名はユミコちゃん。椎名林檎って名前は、大好きな漫画家「吉田戦車」の語感を真似たそう。よしだせんしゃ。しいなりんご。う〜んと、どのへんが？ よくわからんところが、またリンゴちゃんぽくていいんでしょうな。
タグ：2007年
初めましてルードボーイと申します。宜しくお願いいたします。
しょっぱなから申し訳ありませんが、ご職業は何ですか？
はっきり言ってスゲーの一言です。すばらしい。
実は今日同じく椎名林檎についてブログをアップしたのですが、負けました。
猫さんの事は少しは知っていたつもりですが、年齢までとは。
読み手を引き込む文体。すごく好きになりました。
これから読者になりたいと思います。
宜しければ私のブログにも遊びにいらしてください。
by rudeboy (2007-02-23 19:29)
＞ルードボーイさん
どうもはじめましてです。
お褒めに預かり恐縮です。つか照れます。
ありがとうございました。
ちなみにボクはデザインを生業にしております。
ブログも拝見させていただきました。
音楽つながりってことで、
末永く仲良くしてやってください。
よろしくお願いします。
by ハチ (2007-02-26 15:19)
はじめまして。
吉田戦車と椎名林檎のインタビューに載っていたんですが
物質の名前であるところを真似たようですよ。
「戦車」というのはモノの名前ですよね。そこに惹かれたようで。
前にパソコンで調べてたら出てきました。
あとは頬が赤くなりやすいっていうのもあったみたいです。
椎名裕美子って本名聞くと、なんかイメージ変わりますね＾＾
急に普通の人になった感じがします。
by さりー (2007-03-27 19:35)
＞さりーさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
頬が赤くなるんだ。あんまそういうタイプには見えないけど、かわいいですな。
またのぞきに来てください。ありがとうでした。
by ハチ (2007-03-30 15:13)