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【無人島103日目】松任谷由実 "VOYAGER" [CD]

VOYAGER

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1999/02/24
  • メディア: CD

103日目。ハワイ生まれハワイ育ちのナイノアさんは、若い頃「ハワイの人はどこから来たんだろう?」と考えました。文献にはタヒチなどに住むポリネシア人が、紀元前500年から700年頃にハワイに移り住んできた、と書かれていましたが、人類がまだほとんどウホウホだった時代に、どうやって4,000キロの彼方にいたタヒチ人が、ハワイに来れたのでしょう? GPSどころか、海図も羅針盤も、時計すらない時代のミステリーです。そこでナイノアさんは、そういう航海計器を一切使わずに、星や空や波や雲などを読みながら、古代式のカヌーでタヒチまで行ってみようと考えました。「昔の人にできて、今のボクにできないわけがないだろう」。星の位置で針路を測る「スターナビゲーション」という知識を学び、木や布といったシンプルな素材でカヌーを作り、クルーを集いました。そして「自分はどこからきたのか?」というアイデン&ティティを探しに、人間の「ポテンシャリティ」という海へ、ナイノアさんは漕ぎ出したのです。今から30年も前のことです。

先週末まで横浜のみなとみらい桟橋に、ナイノア・トンプソン氏が船長を務める、古代式航海カヌー「ホクレア号」が停泊していました。76年にハワイ〜タヒチ間の初航海を成功して以来、30年以上もの間、文明の機器を一切使わずに、世界の海をどんぶらこ旅してきた古代カヌー。今回は5ヶ月という長い航海を経て、日本に初上陸しました。

船が横浜に入港した6月9日、ボクは友人に誘われて桟橋までその船を見に行きました。ホント小型漁船くらいの大きさしかない、でも驚くほどカッコいい帆船でした。桟橋には大勢の「ホクレア号」ファンが集まり、あちこちでイベントが開かれていました。ボクはまったくナイノアさんのことを知りませんでしたが、「ホクレア号」を紹介した日本のドキュメンタリー映画の上映会を観て、すっかり心酔しファンになりました。映画の中でナイノアさんはこんなエピソードを語っていました。

「最初の航海の時です。真夜中に海が荒れ、星も見えずに、どっちに針路を取ればいいのかまったく分からなくなりました。クルーたちが『船長!進む方向を決めてください!』と私に叫びました。でも私にはまったく分からなかった。だから私は『もうどうにでもなれ』という気持ちで、横になって目を瞑ったのです。諦めてなにもかもを投げ出したような気持ちになったその時、私は厚い雲の向こうに、見えないはずの月の位置がふいに分かったのです。驚いて空を見上げると、ほんの少し雲が切れて、私が思っていたその場所に月が姿を見せ、すぐに消えました。そして私は正しい針路をとることができたのです」。

星の見えないギリギリの暗闇の中で、ふとひらめくように月の位置がわかる。それは奇跡でも偶然でもなく、昔の人々が当たり前のように持っていた能力なのでしょう。文明が発達し道具が増え、生活が便利になったことで、逆に廃れていったしまった人間の内なるポテンシャル。そういうものを少しずつでも取り戻し、次の世代に繋いでいきたいというナイノアさんの志は、まさに男の浪漫です。マジかっこいー。オーキャプテン! マイキャプテン! ボクも連れてってー。

私たちを乗せた船は東へと漕いでゆく。
朝焼けを、夕映えを、果てしなく追いかけて。
月をよぎる雲の色も、波の飛沫さえも、二度と同じ姿はない。
永遠の万華鏡。

遠い海を旅してゆく小さな船の上に、
もっと遠い夢を見てる、あなたがいてよかった。
なぜかとても懐かしい、あなたがいてよかった。

ホクレア号を見ていて、ふいに頭で流れ始めたこの歌はユーミン。83年にリリースされた、その名も「VOYAGER(航海者)」というアルバムに入っている「青い船で」という曲です。無意識に思い出したわりに、まさにどんぴしゃ「ホクレア号」とナイノアさんの歌やなあ、と思った。八王子の呉服屋の娘が、なんでハワイ生まれのボイジャーとシンクロできるんでしょう? ナイノアさんもスゲーけど、ユーミン、あんたもやっぱスゲー。


タグ:2007年
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おかあ

私的に、ユーミンの瞬間最大値がマックスになったのは、パールピアスだったと思います。
それまでも、数々の甘酸っぱい!思い出とともに、心のよりどころでした。
好きで、マストアイテムとして、出るたびにチェックしていたのは、、今回ご紹介の、VOYAGERくらいまでかと…。
その後は、お金のために能力を使ってしまった、超能力者のように(たとえです。彼女が、お金と音楽を引き換えたとは思いませんが)、ユーミンから不思議な力が、消えてしまったんじゃ~ないかと、生意気にも思っとります。(しかしとにかく、時空も超越していた、生命体です。)
by おかあ (2007-06-20 19:05) 

ハチ

>おかあさん
気が合いますねー。
ボクもユーミンのアルバムの中では、
「パールピアス」が一番好きです。
「忘れないでね」なんかは、
向田邦子の短編を彷彿とさせますな。
確かにああいう研ぎすまされた感じは、
最近のユーミンにはないんすよね。
by ハチ (2007-06-22 00:58) 

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