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【無人島148日目】Melody Gardot "Worrisome Heart" [CD]

Worrisome Heart

Worrisome Heart

  • アーティスト: Melody Gardot
  • 出版社/メーカー: Verve
  • 発売日: 2008/02/26
  • メディア: CD


148日目。東京は桜が満開でございますが、「才能」ってやつは一体いつどこで開花するもんなんでしょう。もちろん生まれながらにパンパカパーンって感じの天才って方もいらっしゃるでしょうが、大体の人はそれぞれの才能に「ピーク時」みたいな時期があり、その期間を「開花」と呼ぶんだと思うんです。蕾みどころか、花をつける予兆さえまったくないまま38年過ぎてしまったワタクシではございますが、これから咲くんですよね!? 超遅咲きの超狂い咲きなんですよね!? って誰に何を確認しているのかよく分かりませんが、死ぬ間際とかに開花されてもどうかと思うんで、ちょっとカンフル剤的なものが必要なのかも、とも思ったり。車にでも轢かれてみるか。この人みたいに。

彼女は4年前、19歳の時に、自転車に乗っているところをSUV車に激突されました。重症を負い、即入院。怪我が治った後も、一時的記憶障害と光と音に対する急性知覚過敏症に悩まされていました。リハビリの際に、医者からは「音楽セラピー」を推薦されます。音楽セラピーは、特に記憶障害の患者によく適用される療法で、実際に効果も高いとのこと。彼女はそれまでピアノをちょっと弾ける程度でしたが、怪我のためピアノの前に長時間座ることができないので、ギターを練習。生まれて初めて自作曲を作り、自分を癒すために、自分の曲を、自分の声で歌い始めました。それが彼女の「開花」のスタートです。

それまでは音楽よりもアートのほうに興味があったし、ジャズなんて習ったこともなかった彼女が、事故をきっかけに急速に音楽へと目覚めていきます。ジャズとブルースを基調にした、シンプルながらクオリティの高い楽曲を次々と作り、まだ後遺症で歩くこともままならない状態で、ベッドの脇でレコーディングを開始。事故の記憶を赤裸々に綴り、自分の身に降りかかった不運と幸運を「レッスン」と称した初シングル「Some Lessons」は、地元フィラデルフィアのラジオ局で取り上げられ、話題を呼びます。

そして事故から2年後の2006年、インディーズからリリースしたフル・アルバムがこの『WORRISOME HEART』。その一聴して「本物」だと確信できる歌声は、「ビリー・ホリデーとトム・ウェイツの融合」「ニーナ・シモンとリッキー・リー・ジョーンズを足してコール・ポーターの洗練さを追加した」などと、イマイチ意味がわからん表現で、大絶賛されました。ボク的には、エラ・フィッツジェラルドの包容力と、ノラ・ジョーンズの「夜」の感じを足して、ダイアナ・クラールを3滴垂らして、よくシェーカーで振った感じかなと。余計わからんか。まあ聴いてみてください。







ね? 本物でしょ? スタジオの中でサングラスをかけているのは、ファッションではなく、未だに知覚過敏の後遺症が残っているから。また、記憶障害も完治しておらず、物忘れが激しいので、曲は思いついたら忘れないうちに書き上げてしまうのだとか。「でも私は、朝起きたらイヤなことはきれいさっぱり忘れちゃうってタイプの人間じゃないんです。確かに、私はたくさんのことを忘れがちだけど、私の身に起こったことは忘れてないですから」とは、彼女の言葉。

現在は、プロデューサーにジョニ・ミッチェルを手がけたラリー・クラインを迎え、初のメジャーアルバムを制作中。最悪の状況が引き金となって表に現れた彼女の才能の、本当の意味での「満開」はこれからかもしれんです。最後になりましたが、彼女の名前は、メロディー・ガルドット。弱冠23歳にして、奇跡の開花です。


タグ:2008年
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