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【無人島161日目】日吉ミミ "命日" [CD]

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中島みゆき ソングライブラリー 3

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 1997/11/19
  • メディア: CD

161日目。漫画家の赤塚不二夫氏がご他界され、その葬儀で「タモリ」こと、森田一義氏が詠んだ弔辞が、ネット上で話題になっております。結婚式のスピーチとは違い、弔辞は準備をしておくものではないし、ましてや笑わせたり人を喜ばせるのが目的ではないので、「上手だね」「さすがだね」なんて褒め言葉は、逆に失礼にあたるかもしれませんが、ネットにあがっているその弔辞の全文を読むと、全くの他人事ながらグッと迫るものがございます。特に終盤、今まで面と向かって「ありがとう」と言ったことがないというくだりで、「肉親以上の関係であるあなたとの間に、お礼を言う時に漂う他人行儀な雰囲気がたまらなかった」と言うその台詞に、ボクはなんだか胸を突かれました。


例えばアメリカ人のように、日常的に愛の言葉や感謝の気持ちを口にする文化がある国の人なら別でしょうが、ここ日本では、家族でも恋人でも親友でも、近しければ近しいほど、その手の言葉が言いづらくなります。親しい相手に対する「ありがとうございます」や「愛してます」なんて言葉は、よっぽど切羽詰まるか頭に血が昇っている時くらいしか使わないし、なまじ言えたとしても、逆に「なんかあった?」などと相手に心配されてしまうのがオチでしょう。少なくともボクの周りでは、そんな感じです。

生きてる間に言えればいい、と思うけれど、きっと生きてる間には、決して口には出せないだろうと思う言葉。相手がいなくなった時、そのふがいなさと、後悔と、でもそれでよかったんだと思うある種の清々しさ。なんだかそういうものがこの弔辞にはギュッと詰まっているような気がして、グッとくるのです。



あたしと同い年の
息子に家出されて
おかみさん
やけっぱちで始めた
おんぼろ飲み屋
商売をしてゆくには
品数がなさすぎるよ
客のより好みを
言ってちゃいけないよ

こんなことなら
もっとあんたのバカ息子と
呑んで
話でもしておくんだったね

あたしと同い年の
息子に家出されて
やけっぱちおかみさん
商売が下手だね


あたしと同い年の
息子に先立たれて
その夜はおんぼろ飲み屋
柱も泣いてるみたい
風の日はおしぼりひとつ
雨の日は傘をひとつ
隠すように置いてあったのを
おかみさん
あたしは見てたよ

こんなことなら
もっとあんたのバカ息子と
呑んで
話でもしておくんだったね

あたしと同い年の
息子に先立たれて
その夜はおんぼろ飲み屋
商売はめちゃめちゃ


タモリ氏の弔辞を読んでいて、なんとなく思い出したこの古い歌。77年に日吉ミミが歌った「命日」という歌で、作詞作曲は中島みゆき。彼女がいろんな歌手に提供した歌を集めたコンピレーション、「ソングライブラリー」のパート3におさめられています。

愛する人に先立たれ、残された者の後悔とみじめさを、第三者の目から鮮やかに描いた佳曲です。きっとこのおかみさんもタモさんも、結局口にできなかった言葉を肴にして、年に一度、その人の命日にはひとりで酒を呑むのでしょう。それは、寂しいことだけれど、決して不幸なことではないのかも知れません。なにはともあれ、昭和の漫画王に合掌。もうすぐボクも、バカボンのパパの年齢になります。


タグ:2008年
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