SSブログ

【無人島165日目】湊かなえ "告白" [BOOK]

告白

告白

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: 単行本

165日目。早い時間から酒を呑み始め、変な時間にうたたねしてしまったせいでしょう、昨夜は夜中の4時くらいにパカッと目が覚めてしまい、はてさてどうしたものか。まあ明日(つまり今日)は日曜だし、無理して眠らなくてもいいだろうってことで、買ったばかりでまだページを開いていなかった本を読み始めました。大体いつもベッドで横になりながら本を読んでいると、いつの間にやら瞼がズリズリに下がり始めるので、その効果も期待しつつだったワケですが、本のチョイスが良くなかったようです。読み始めて1時間が過ぎ、2時間が過ぎ、いい加減体は眠気を訴えているのに、本が置けない。もうどうしようもなくページをめくってしまう。気づけば夜が明け、朝の光がとっちらかった部屋の中をぼんやり照らし始める頃、約270ページの長編をようやく読了。疲れた。ぐったり。

そんな磁力を持った小説、湊かなえ著『告白』。第29回小説推理新人賞受賞作。湊氏は73年生まれで、これまでラジオのシナリオなどを手がけてきましたが、小説ではこの『告白』がデビュー作となります。これがデビュー作かよ。いろんな意味で末恐ろしいです。

物語は、とある中学校で起こったひとつの殺人事件を軸に、その被害者の母親、加害者、共犯者、加害者の恋人、共犯者の親などが、一章ずつそれぞれの立場から事件について『告白』をするという形式で描かれます。構成的には、28日目に紹介した貫井徳郎の『愚行録』とも似ていて、目新しいというほどでもないかも知れません。

ただこの小説の魅力は、湊氏のその圧倒的な語り口。宮部みゆき氏の持つ、あの中毒性のあるストーリーテリングにも匹敵する筆致で、人間の持つ陰湿で陰鬱で、できれば目をそらしたい嫌らしい部分を、これでもかというほどに抉(えぐ)りまくります。描かれる復讐劇は、痛快を通り越して、嫌悪感すら感じるほどです。正直ボクはこの本に登場するどのキャラクターも好きになれなかったし、シンパシーも感じませんでした。読んでる最中は、ホントに胸糞悪かったし、読後感も最低で、このまま寝たら悪い夢を見そうだったので、寝酒を呑み直したほどです。(←まだ呑むか)

しかし1日経って改めて本を手に取ると、また読み始めたくなってしまう魅力がこの本にはあります。どのキャラクターの独白も、身勝手で理不尽な言い訳にしか聞こえないにも関わらず、どこか人間の持つ『本質』みたいなものを確実に捉えている。誰も好きになれなかったのは、たぶんボクの中にある陰湿で陰鬱で嫌らしい部分を、全員が別々の角度から体言しているからなのでしょう。そんな心の暗部を、ここまでリーダビリティー(=読みやすさ)の高い文章で書き上げたそのセンスと文書力に脱帽です。次作が待ち遠しいです。

小説に清々しさやカタルシスを求めるなら、この本はオススメしません。疲れている時や凹んでいる時もやめておいたほうがいいでしょう。ただ、眠れない夜に「もう今日は眠らない」と腹を括って読み始めるには最適な本かと。だって絶対眠らせてくれないもの。疲れるし、ぐったりするけど、最高にエンターテインしてくれます。


タグ:2008年
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。