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【無人島202日目】大橋トリオ "贈る言葉" [CD]

FAKE BOOK

FAKE BOOK

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: rhythm zone
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: CD

202日目。3月だというのに、東京では春の雪が降ったりと、まだまだ季節は浅いようです。でも近所で咲く梅の花びらが、我が家の玄関先までハラリと舞い降りていたりすると、鼻孔を大きく開いて深呼吸したくなります。「東風(こち)吹かば 匂いおこせよ梅の花  主(あるじ)なしとて春な忘れそ」とは、菅原道真が詠んだ歌。春はお別れの季節です。みんな旅立って行くんです。そんな時に、日本人なら必ず思い浮かべるこの歌を、本日はご紹介します。


最近話題のシンガーソングライター・大橋トリオ。昨年はiTunesの選ぶ「今年最も活躍が期待できる新人」の1人に選出され、セカンドアルバム『THIS IS MUSIC』が、『第1回CDショップ大賞』で準大賞を受賞するなど、すでに大変な人気っぷりです。ちなみにトリオちゃんは「鳥男(←字にすると怖い)」ちゃんではなく、3人編成を意味する「Trio」だとのこと。ひとりぼっちなのに自分のことトリオって呼ぶんだよ、おかしいね、鳥男ちゃん。怖っ!

自身のCDデビューは07年ですが、本名の「大橋好規」の名義で、03年ごろからプロデューサーや作曲家として活躍されておられました。往年のマイケル・フランクスのようなキャッチーで優しいメロディー。どの曲を聴いても、やがてひとつの映像に焦点が結ばれていくかのような不思議な世界観。そして、決して美声でも音域が広いわけでもないのに、セクシーで飽きのこないボーカリストとしての資質。素晴らしいよね、鳥男ちゃん。

そんな鳥男ちゃんが本日カバーアルバム『FAKE BOOK』をリリースしました。マイコーや宇多田ヒカルちゃんなど、日本語も英語も得意な鳥男ちゃんならではの選曲ですが、先行リリースされていたのが『海援隊』のかの名曲『贈る言葉』。はてさて、鳥男ちゃんマジックにかかると、この歌がどう変身するのでしょう。まあ聴いてみましょうか。





ボクは正直この歌の持つ、説教っぽくて押し付けがましい感じがあまり好きではありませんでした。別れ際に、こんなとりとめも具体性もない言葉を贈られてもげんなりだわなと、この歌がヒットした当時(79年)から思っておりました。でもこの鳥男ちゃんのカバーを聴いて、この歌の持つ「もどかしさ」みたいなものを、初めてじんじんと感じました。愛する人の旅立ちの時に、まるで田舎のおかんのように、次から次へと説教がましい台詞を連ねてしまう不器用さ。「飾りもつけ」ないことで、逆に伝わりづらくなってしまう、本当の気持ち。去っていく後ろ姿に、まだなにか言い忘れたことがあったような気がする焦燥感。

春はお別れの季節です。みんな旅立って行くんです。春は旅立っていく人の季節でもあり、同時に残されるものの季節でもあります。この歌は、贈られる側の歌ではなく、贈る側の歌だったのかも知れません。もしくは、旅立つ側が残されるものに、贈った言葉だったのかも知れません。この歌と出会って30年にして、初めて理解できた気がしました。ありがとうね、鳥男ちゃん。


タグ:2010年
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