【無人島236日目】ハナレグミ "天国さん" [CD]
236日目。ちょっと前の話になりますが、『エンディングノート』という映画を観てきました。砂田麻美さんという33歳の女性の初監督作品で、ご自身のお父上が癌にかかり、ご他界されるまでの半年間を撮り続けた異色作。ボクはオフィシャルサイトの予告篇を見た時点で、すでに泣きそうになってしまったのですが、「身内の死」というヘビーな題材を扱いながら、笑いあり涙ありのハートウォーミングな映画で、映画館でボクは、泣きながらも笑い、切ないながらも温かい気持ちになりました。
主題歌はハナレグミの新曲『天国さん』。先月発売された5枚目のアルバム『オアシス』に収録されています。あまりにも映画の内容にピッタリなので、てっきり書き下ろしかと思いきや、映画主題歌のオファーがくる前から出来ていた曲なのだそう。でもこの歌以外には考えられないほど、映画の中に深くとけ込んでいて見事です。
映画では、なによりもお父さんの、どんな時にもユーモアをなくさない、その胆力の強さに打たれます。自分がもうすぐ死ぬと分かった時に、自分のわがままや泣き言をぐっと飲み込んで、ここまで家族や周りにいる人間のことを考えられるかどうか……。ボクには到底自信がありません。
この映画に関して、糸井重里氏の「日刊イトイ新聞」でも特集が組まれ、糸井氏と、砂田監督の師匠であられる『奇跡』の是枝裕和監督の、対談コンテンツがアップされています。その中で糸井氏が吉本隆明の言葉を引用して、こんなことを言っています。
僕らやっぱりどうしても「死」っていうのは、自分の所有物みたいに考えたがる。自分の所有物としての「死」について、「俺のものだから、振り回させてくれ」ってやられるんだけど、そういうさまざまなドラマは、子どもっぽいなと思うようになった。 (糸井重里)
ここだけ読んでもなんのこっちゃ分からんと思うのですが、映画を見てからこの文章を読むと、なんだか深く頷けます。「死ぬ」って、そのタイミングも方法もコントロールできないことで、例えるなら、「天災」に近いようなことなんだなーって思います。いつくるかわからないし、どんなカタチでくるのかもわからない。でもいつかは必ずくる。
ボクたちのすべきことは、その「天災」が訪れたときに、慌てず笑って、できればギャグなんかもかませるくらいの余裕をもって、ドアの内側に迎え入れる準備をしておくことなのかも知れません。水や食料を買い置きしておくくらいの当たり前さで、その日のために備えておくこと。それは「死に方」を考えるように見えて、詰まるところ「生き方」の問題に他ならないのです。
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