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【無人島241日目】畠山美由紀 "わが美しき故郷よ" [CD]

わが美しき故郷よ

わが美しき故郷よ

  • アーティスト: 畠山美由紀
  • 出版社/メーカー: Rambling Records
  • 発売日: 2011/12/07
  • メディア: CD


241日目。あまりにも衝撃的な出来事だったので、まだ半年くらいしか経っていないような気がするのですが、今週末で東北地方太平洋沖地震から丸1年です。実際に被災され、家族も住む場所も奪われてしまった方々のことを考えれば、この1年ぬくぬくと生きてきたボクなんかがあの震災を語るのは、失礼にあたるやも知れません。1年前、ただの傍観者でしかなかったボクは、テレビやネットで流れる映像を見ながら、ただ呆然とするばかりでした。そして1年経った今、ボクは相変わらず傍観者で、相変わらず呆然としたままなのです。


ただあの日を境に確実に変わったことは、暴力的に流されていく街や人を見て、「確かなものなど何もない」という真理を、自分なりに深く認識したということでしょうか。テレビ番組で、変わり果てた東北の街並みや、被災された人々の懸命な姿をみるたびに、なぜか泣けてきてしまうのは、彼らに同情しているのではなく、いずれ自分にも確実に訪れるであろう「大切なものを喪失する日」の追体験なのかもしれません。

ソロ活動以外にも「Port of Notes」や「Double Famous」でボーカリストとして活躍する畠山美由紀。宮城県気仙沼市出身の彼女が、昨年の震災直後に、変わり果てた故郷に宛てて書いた散文詩があります。タイトルは『わが美しき故郷よ』。彼女自身の朗読でお聞きください。




全文をお読みになりたい方はこちらからどうぞ。


旧い友達に宛てた手紙のように、懐かしさに溢れたプライベートな言葉たち。宮沢賢治を彷彿とさせる飾らない文体。読みながら徐々に故郷のアクセントに戻っていくプロセス。効果的なピアノの旋律。何度聞いても、ボクはこの朗読に泣かされてしまいます。

昨年12月にリリースされた5枚目のアルバム『わが美しき故郷よ』には、この朗読と対になる同名曲や、『What A Wonderful World』『Moon River』などスタンダード、『ふるさと』『浜辺の歌』などの唱歌も収録されております。テーマは「震災」ではなく「喪失」と「寂寥」。


かつてフランスの作家マルセル・プルーストが名著「失われた時を求めて」で試みた言葉による過去の再生の執拗な願いを、憚りながら私も強く抱きました。天才をひきあいにだして図々しいかぎりですが、私も私なりに音楽と言葉で、精一杯の故郷への讃歌というものを作りたかった。歌のなかに立ち昇ってくるかつての美しい故郷の有り様を未来につなげたかった。(本人ブログより抜粋)


震災の日は東京でリハーサルをしていたという彼女が、傍観者として目にした故郷の喪失。遠く離れていても、いつもそこにいてくれると信じていたものが流され、見ているだけでなにも出来なかったという後悔と無力感。その感情が熟成され、「望郷」に代わり、やがて彼女はそれを歌へと昇華させていきました。この1年間にリリースされたどんな応援歌やチャリティソングよりも、ボクにはこの散文詩が一番深く刺さりました。そしてこの傍観者の詩の中にこそ「再生」の種があると思えてならないのです。



タグ:2012年
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