【無人島288日目】Damien Rice "My Favourite Faded Fantasy" [CD]
288日目。例えがあまり良くないのですが、まだボクが20代の頃に、ある雑誌に素敵な連載コラムを見つけて、毎回楽しみに読んでいた時期がありました。文面からその著者が女性であることは推測できたのですが、思慮深くも鮮やかな印象を残すその筆致から、心の落ち着いた穏やかな女性が書かれていらっしゃるのだろうと、勝手に想像しておりました。その後、不思議な縁でその著者の方とお会いする機会があったのですが、実際は全く違い、良くも悪くも周りを振り回すエキセントリックなタイプの女性でした。向こうからしてみれば「アンタが勝手に想像してただけやろ!」って話なのですが、あまりのギャップにボクはショックを受けました。ボクはその時まで、作品と人格はほぼイコールなものだと信じていたのです。太宰や啄木のように、気に病む人は気を病んだ作品を作るし、ヘミングウェイやピカソのような男らしい作家は、得てして大味で豪快な作品を作る。でもそれは誤りでした。人間はもっと多面的で、思いがけない人の、思いがけないポケットに、思いがけない宝物が隠されているものなのです。