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【無人島295日目】谷川俊太郎 "生きる" [BOOK]

生きるわたしたちの思い

生きるわたしたちの思い

  • 作者: 谷川俊太郎withfriends
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川マガジンズ
  • 発売日: 2008/07/30
  • メディア: 単行本

295日目。すっかり遅くなりましたが、みなさま、新年明けましておめでとうございます。年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。ボクは今年の正月休みはどこにも行かず、ケーブルテレビで録画しておいた『「北の国から」シリーズ イッキ見!放送』を延々と鑑賞しておりました。『北の国から』がスタートしたのは1981年。ボクは当時12歳で、「純くん」にズブズブ感情移入しておりましたが、この歳(47)で改めて見直すと、目線はすっかり「五郎さん」なのです。この名作ドラマは「純くん」と「螢ちゃん」の成長物語でありながら、同時に「東京に馴染めず、結婚にも失敗した中年男が、故郷でゼロから人生をやり直す」という再起の物語でもあります。テレビシリーズ開始時の五郎さんの年齢設定は45歳。あばら屋を修繕し、電気や水道を自力で引き、ドカチンしながら2人の子供と格闘する五郎さんの姿は、ボクの冷え切ったハートに、かすかな種火を灯してくれます。今からでもまだ何かできるのではないか? いや「やるなら今しかねえ!」なのではないか? そんなことを自問した2017年正月でした。

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【無人島294日目】こうの史代 "この世界の片隅に" [BOOK]

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

  • 作者: こうの 史代
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2008/01/12
  • メディア: コミック

294日目。20年以上前に亡くなった母方の伯母は終戦の日、玉音放送を聞いて他の家族が安堵の溜息を落とすなか、「なんで負けなのよ!もっと戦えるわ!」と悔し涙を流したのだそう。後年、母がそのことで伯母をからかうと、「アレは嘘よ。嬉し泣きだったのよ」などと嘯いておりましたが、まだ子供だった甥のボクから見ても一本気かつ情熱的だった彼女のこと、きっとモンペ姿のおさげ髪を激しく揺らしながら、おいおいと泣き叫んだ姿が容易に想像できます。日本が勝つと信じて、正に「耐え難きを耐え忍び難きを忍んで」きただろう伯母(を含んだ多くの日本人)にとって、負けを認めることは、それまでの苦労を水泡に帰することと同意だったはず。「終わって良かった」と安堵するよりも先に、「ふざけんな!勝手に終わらせてんじゃねえよ!」と憤るほうが、感情の流れとして納得できるような気がします。

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【無人島293日目】西川美和 "永い言い訳" [BOOK]

永い言い訳

永い言い訳

  • 作者: 西川 美和
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/02/25
  • メディア: 単行本

293日目。「性善説」「性悪説」という言葉があります。「人は生まれつきは善だが、成長すると悪行を学ぶ!」と説いた孟子さんと、「人は生まれつきは悪だが、成長すると善行を学ぶ!」と説いた荀子さん。結局両者とも「だから努力して良い人間になりなさい!」という教えなので、どちらが良い悪いの問題ではないのですが、個人的にボク自身は「性悪派」の人間ではないかと思うのです。ワガママだし、利己的だし、甘ったれだし、努力が嫌いで、ええかっこしいで、見栄っ張り。なんの縛りのない場所に生まれていたら、超自分勝手に生きてしまいそうだし、ルールや法律や人の目があるからこそ、ブーブー文句を垂れながらも、どうにか人並みに自分を律せられているタイプなのです。ダメダメ47歳。

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【無人島291日目】平野啓一郎 "マチネの終わりに" [BOOK]

マチネの終わりに

マチネの終わりに

  • 作者: 平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
  • 発売日: 2016/04/09
  • メディア: 単行本


291日目。「ハチくんのこと……好きって言ったら……困る?」ブーッ!(←鼻血) ただいま公開中の映画『青空エール』が悶絶するほど気になるのですが、47歳のチョンガーが一人で観に行ったら周りにご迷惑を掛けてしまいそうなので、グッと我慢してYouTubeで予告編をリピートしている2016年の夏の終わり。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 10代の頃の恋なんて、すでに幼少期の記憶を辿るのと同じくくらい深い靄の中に霞んでいるのですが、「他人を好きになる」という生まれて初めての感情に、戸惑い、持て余し、上手く処理できずに身悶えてばかりの、甘酸っぱいというよりは苦み走った思い出が、ぼんやり見え隠れしております。そしてそれは、10代に限った話ではなく、大人になっても(もしかすると大人になればなるほど)、さらに持て余し右往左往させられる感情だったりもします。この小説を読むと、そんなことを考えさせられます。

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【無人島287日目】青山文平 "つまをめとらば" [BOOK]

つまをめとらば

つまをめとらば

  • 作者: 青山 文平
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/07/08
  • メディア: 単行本

287日目。先日『リリーのすべて』という映画を観てきました。1920年代のデンマークを舞台に、世界初の性適合手術を行った実在の女性とその奥様の、苦悩と献身の物語。若手実力派俳優、エディ・レッドメイン君が、スーツ姿のイケメンから、徐々に愛らしい女性になっていく、その巧みな演技だけでも一見の価値がある映画ですが、どちらかと言えばこの作品の主体は「奥様」の視点。最愛の夫がだんだんと女性になっていく姿を目の当たりにしながら、反発と同情、混乱と諦め、憎しみと愛しさの間を、うぉーさぉーする奥様の苦悩は、観客に「伴侶とは?」という命題を問いかけてきます。序盤の奔放でわがままな若妻から、後半すべてを飲みこんだ聖女の面持ちに変わるまでのプロセスを、見事に演じきった女優、アリシア・ヴィカンダーさんは、今作で本年度アカデミー賞で助演女優賞を獲得。エディ君も霞むほどの熱演なのでした。

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【無人島281日目】西加奈子 "サラバ!" [BOOK]

サラバ! 上

サラバ! 上

  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/10/29
  • メディア: 単行本

281日目。子供の頃と成長した後とで、性格が全然違ちゃった!なんていう人は意外と多いのではないかと思うのですが、かくいうボクも幼少時は、人前で歌ったり踊ったりするのが大好きな、ナチュラルボーン・エンターテナーだったらしいです。今ではそんな片鱗(酔っ払った時以外は)まったくないワケですが、両親や親戚の話を聞くとすごい社交性のある子供だったとのこと。曰く、頼まれもしないのにみんなの前でモノマネ(ネタは欧陽菲菲か加トちゃんだったそう)をしていたとか、電車の中で知らない人と喋ってたとか、幼稚園で男女構わずにキスしまくってたとか、それって社交性?って感じのエピソードがボロボロでてきます。そして一番の驚きは、本人はまったくソレを覚えてないし、今では人前でモノマネなんて考えただけでケツがモゾモゾしちゃうような、真逆の大人に育ってしまったこと。人って不思議。

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【無人島279日目】黒柳徹子 "トットひとり" [BOOK]

トットひとり

トットひとり

  • 作者: 黒柳 徹子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/04/28
  • メディア: 単行本

279日目。先日実家に帰って、母親と居間で世間話をかましていた時のこと。テレビからある有名人の訃報が流れ、不意に「そうそう、アタシの『遺書』は鏡台の引き出しに入ってるからね」みたいなことを、母親が何気ない口調で言い出し、ボクは驚くというよりも、オロオロしてしまいました。もう少し若い頃なら、笑いながら「ナニ言ってんの?」的な切り返しをしたでしょうが、傘寿を超えた親がポロリと切り出した遺書の話を、「ナニ言ってんの?」と混ぜ返すのは、いくら息子でも失礼に当たる気がしたのです。どうしよう?どう返そうか?と態度を決めかねている間にテレビは別の話題に移り、なんとなくそのままになってしまいました。ボクはいい歳をして、夕暮れどきに迷子になった子供のような、なんとも心細い気持ちになったのです。

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【無人島274日目】山田参助 "あれよ星屑" [BOOK]

あれよ星屑 1 (ビームコミックス)

あれよ星屑 1 (ビームコミックス)

  • 作者: 山田参助
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
  • 発売日: 2014/04/25
  • メディア: コミック

274日目。週末、話題のディズニー映画『ベイマックス』を観てきました。『アナと雪の女王』が姉妹愛と女の子の憧れをテーマした映画だったのに比べ、『ベイマックス』は兄弟愛と男の子のロマンを軸にした冒険活劇。アメリカと日本を融合させた無国籍な場面設定と、「癒し系ロボ」というキャラクターは実に現代的でしたが、緻密で美しい画面構成とストーリーの清廉さは、さすがディズニー。そして何よりベイマックスの愛らしさ! ベイマックス、超ほしい! 空飛んだり、ロケットパンチ出したりしなくていいから、ヨタヨタと仕事から帰ってきたオジサンを、そっと後ろから抱きしめてほしい。言わずとも疲れを察して、やさしく手当してほしい。そして眠るまで頭をナデナデしてほしいって、自分で書いてて相当キモいし、どんだけ弱ってんだ俺は?って話ですが、でもほしい。高齢者向けの介護ロボの開発は進んでいるようですが、疲れたサラリーマンを癒してくれるロボの発明もそろそろどうでしょう? って、俺は誰に話してるんでしょう?

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【無人島272日目】奥田英朗 "ナオミとカナコ" [BOOK]

ナオミとカナコ

ナオミとカナコ

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/11/11
  • メディア: 単行本

272日目。よく「女同士の友情って、男に比べて薄っぺらいよね!」みたいな意見を聞きますが、アレは実際はどうなんでしょうか? もちろん個人の性格に依存する話ではありますが、一般的に見ても、ボクは女性同士の信頼関係を薄っぺらいと感じたことはありません。『テルマ&ルイーズ』『フォーエバー・フレンズ』『フライド・グリーン・トマト』など、女性の熱い友情をテーマにした映画は多々あるし、「女の友情ってドロドロなの!」とも聞きますが、嫉妬や陰口や噂話が好きな男だって腐るほどおります。「女同士の友情」うんぬんを男が語っているのだとすればただの愚行だし、女性がそれをネガティブに語るなら、その人がまだ本当に気の合う同性と知り合ってないだけなのでは?とも思うのです。偉そうだな。すんません。すんません。なんで急にこんな話をしているのかと言うと、最近女性の友情をテーマにした小説を立て続けに2冊、拝読したからなのでした。

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【無人島269日目】ヘンリー・ディヴィッド ソロー "孤独の愉しみ方" [BOOK]

孤独の愉しみ方―森の生活者ソローの叡智 (智恵の贈り物)

孤独の愉しみ方―森の生活者ソローの叡智 (智恵の贈り物)

  • 作者: ヘンリー・ディヴィッド ソロー
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2010/09/01
  • メディア: 単行本

269日目。もうすでに1ヶ月ほど前の話になりますが、アメリカの名優、ロビン・ウィリアムズ氏がご他界されました。ガープの世界、グッドモーニング・ベトナム、いまを生きる、フィッシャー・キング、グッド・ウィル・ハンティング。いつも抑圧的な体制に押しつぶされそうな弱者の側に立ち、正義を貫くために身を挺して戦う等身大のヒーローを、飄々かつ颯爽と演じておられました。特に『いまを生きる』は、当時まだ大学生だったボクの、自我と他我に迷うフニャフニャでグニョグニョの「自己意識」というぬかるみに、ガツンと大きな杭を打ってくれた映画でした。物事を深く考えること、孤独を愛すること、自然を愛し詩を読むこと。映画を観ながら、あのパブリックスクールの教室に自分も席を置いているかのような気持ちで、キーティング先生の型破りかつ思慮深いその一言ひとことに、背中を押されるような、なにかを許されたような、不思議な気持ちになったものでした。オーキャプテン、マイキャプテン。

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【無人島252日目】村上春樹 "日々移動する腎臓のかたちをした石" [BOOK]

東京奇譚集

東京奇譚集

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/09/15
  • メディア: 単行本

252日目。ボクがデザイナーという職業を生業にしはじめて、今年で17年になります。最近はディレクターなどという偉そうな肩書きをもらい、自分でデザインをする機会はあまり多くありませんが、それでも己の好きな分野の仕事に携わることができ、曲がりなりにも今日まで食いつないでこれた事を考えると、自分はずいぶんラッキーなほうだったと思います。ただ最近、四十路も折り返し地点が見え始め、陽の傾きかけた西の空にぼんやりと「もっと他にもなにかあったのではないか?」などと思ったり。不惑。そして天命。昔の人は偉かったワケです。

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【無人島251日目】坂上秋成 "惜日のアリス" [BOOK]

惜日(せきじつ)のアリス

惜日(せきじつ)のアリス

  • 作者: 坂上 秋成
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/04/11
  • メディア: 単行本

251日目。五月の雨は、ひと降りごとに夏の匂いが濃くなっていくような気がします。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。すっかりさっぱりブログをさぼっておりましたが、ボクは元気です。四月から弊社にも新入社員が入り、あまり絡みもないのですが、歓迎会などでおそるおそる親御さんのご年齢を聞いてみたりすると、ボクと同学年だとの回答に軽度の発作を起こしたりしていました。ちょっと前までは「10歳も違うの!?」「干支が一緒!?」あたりでオロオロしておりましたが、20歳以上も違うとなると、それはもう同じ土俵に乗せていただくこと自体が間違っているような、落ち着かない気持ちになります。そしてそれは会社だけでの話ではなく、世間一般の中で最近たびたび遭遇する感情だったりします。

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【無人島238日目】山田太一 "空也上人がいた" [BOOK]

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)

  • 作者: 山田太一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/04/07
  • メディア: 単行本

238日目。さて年末ですので、今年のレビューの総決算をしたいと思います。まずはBOOK部門。今年出会って面白かった本と言えば、229日目に紹介した『きのうの神様』、伊集院静の『いねむり先生』、辻村深月の『ツナグ』、直木賞受賞作の『下町ロケット』あたりがパッと思い浮かびます。あと、新潮社の文芸誌『yom yom』の7月号に掲載された、森絵都の『ヨハネスブルクのマフィア』は、人が人に残す思いがけない「痕跡」をテーマにした短編で、減量中のボクサーのように無駄を削ぎ落した文体と、鮮やかなストーリーテリングにツボり、何度も何度も読み返しました。


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【無人島235日目】ウォルター・アイザクソン "スティーブ・ジョブズ I" [BOOK]

スティーブ・ジョブズ I

スティーブ・ジョブズ I

  • 作者: ウォルター・アイザクソン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/25
  • メディア: ハードカバー

235日目。ボクがそれまでの仕事をやめて、グラフィック・デザイナーを生業にしようと決心したのは1994年です。ハッタリをかまして出版社のデザイン部門に潜り込み、生まれて初めてあてがわれたコンピュータはMacintoshのQuadra 605でした。それから7100になり、タワー型の8500に移り、G3になった頃、別の会社に転職し、それから数年後、デザイナーとして稼いだ金で自分用のPowerBook G4 Titaniumを買ったときの高揚感は、もう10年も前の話なのに、まるで昨日のことのように覚えています。


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【無人島229日目】西川美和 "きのうの神様" [BOOK]

きのうの神さま

きのうの神さま

  • 作者: 西川美和
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2009/04/16
  • メディア: 単行本

229日目。前回、コレちゃんこと是枝裕和監督の映画『奇跡』について書きましたが、ボクの好きな映画は得てしてこういうドキュメンタリー・タッチの渋チンな映画が多いです。特撮&3Dのザ・ハリウッドな映画も観ないではないですが、観た後に心にすーっと染み入るのは、低予算ながらもなんとかアイデアを絞り出して制作したような、単館系の映画が多いのです。海外の監督でいうとケン・ローチやダルデンヌ兄弟、そして最近の日本人映画監督だと西川美和監督の作品にヤラれます。


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【無人島199日目】藤谷治 "船に乗れ!" [BOOK]

船に乗れ!〈1〉合奏と協奏

船に乗れ!〈1〉合奏と協奏

  • 作者: 藤谷 治
  • 出版社/メーカー: ジャイブ
  • 発売日: 2008/10/01
  • メディア: 単行本

199日目。ボクが高校生だったころ、ちょうど世間はバブル景気に湧き始めており、テレビでは「おニャン子クラブ」のメンバーが増殖し、大相撲では千代の富士が記録的連勝を成し遂げ、遠い国では原子力発電所が爆発したりしておりました。その頃のボクは特に何かに夢中になることもなく、ただぼんやりと、でもそれなりに日々を楽しく過ごしておりました。無茶をしなければ大学までエスカレートでいけるという環境の中、勉強にも遊びにもとことん突き進むことなく、友達とピンポンをしたりファミコンをしたり、たまに煙草を吸って悪ぶったりしていました。今ではもう、高校生だった頃のことを思い出すことはあまりないし、正直あまりよく覚えてもいませんが、あの頃は「高校生」でいられるのが、人生の中でたった3年間しかないなんて、分かっていなかったのだろうと思うのです。


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【無人島182日目】村上春樹 "はじめての文学" [BOOK]

はじめての文学 村上春樹 (はじめての文学)

はじめての文学 村上春樹 (はじめての文学)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/12/06
  • メディア: 単行本

182日目。今日、私がみなさんに伝えたいことはひとつです。それは、私たちの誰もが、国籍や人種や宗教の違いを超えて、人間であるということです。固い壁、すなわちシステムというものに直面している、脆い卵だということです。どう見たって、私たちには勝ち目がありません。壁はあまりにも高く、強く、そして冷たい。私たちに勝てる見込みがあるとすれば、互いの個性を、つまり自分自身も他者も互いにたったひとりのかけがえのない精神を持つ者であると認め合い、互いのこころを結べば温かさを得られると信じることによってのみ、それは可能になるのです。


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【無人島179日目】天童荒太 "悼む人" [BOOK]

悼む人

悼む人

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/11/27
  • メディア: 単行本

179日目。明けましておめでとうございます。つか、遅すぎですな。すんません。お正月休みは特にどこにもいかず、ずっとゴロゴロぐびぐびしてました。ナチュラルボーンな貧乏性なので、普段はまとまった休みが取れると、旅行やらなんやら予定を詰め込みがちなほうなのですが、今回の年末年始の9連休はなにも予定をいれず、実にのんべんだらりとした、ある意味贅沢な冬休みでした。おかげで買うだけ買って棚に積み上げていた本も、かなりたくさん消化できました。年明け一発目はまずその本の中からこの話題作をご紹介。


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【無人島170日目】ポール・オースター "最後の物たちの国で" [BOOK]

最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

  • 作者: ポール・オースター
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

170日目。小学生の頃に国語の教科書で読んだお話です。日本で働いているアメリカ人の青年が、久しぶりに故郷に帰ることになります。彼は帰郷したらぜひやりたいと思っていることがありました。それは実家の子供部屋の壁紙を剥ぐことです。子供の頃、部屋にカラフルな絵柄の壁紙を貼っていた時期があって、子供ながらにとてもきれいだと思っていました。なぜか日本で過ごす間にその壁紙のことを思い出し、ぜひもう一度見てみたいと思ったのです。空港に迎えにきてくれた妹にその話をすると、妹も覚えているようです。「あのキレイな色の壁紙ね。子供たちが遊んでいる絵で、男の子が青いシャツを着ているやつでしょ?」「いや、男の子のシャツはオレンジだったぜ?」。そんな会話をしながら家に戻り、早速ふたりで子供部屋の壁紙を1枚ずつ剥がしていくと、やがてその絵が現れます。しかし男の子のシャツは青でもオレンジでもありません。ましてやカラフルな絵などではなく、その壁紙自体が「影絵」だったのでした。

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【無人島165日目】湊かなえ "告白" [BOOK]

告白

告白

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: 単行本

165日目。早い時間から酒を呑み始め、変な時間にうたたねしてしまったせいでしょう、昨夜は夜中の4時くらいにパカッと目が覚めてしまい、はてさてどうしたものか。まあ明日(つまり今日)は日曜だし、無理して眠らなくてもいいだろうってことで、買ったばかりでまだページを開いていなかった本を読み始めました。大体いつもベッドで横になりながら本を読んでいると、いつの間にやら瞼がズリズリに下がり始めるので、その効果も期待しつつだったワケですが、本のチョイスが良くなかったようです。読み始めて1時間が過ぎ、2時間が過ぎ、いい加減体は眠気を訴えているのに、本が置けない。もうどうしようもなくページをめくってしまう。気づけば夜が明け、朝の光がとっちらかった部屋の中をぼんやり照らし始める頃、約270ページの長編をようやく読了。疲れた。ぐったり。

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【無人島164日目】Randy Pausch "最後の授業" [BOOK]

最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版

最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版

  • 作者: ランディ パウシュ
  • 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
  • 発売日: 2008/06/19
  • メディア: ハードカバー

164日目。前にもチラッと書きましたが、本に関してボクの苦手なジャンルはというと、自己啓発本と闘病記モノ。自己啓発本の「アンタはこうすればいいのです!」的な上から目線な文章を読むと、「そんなこと知ってんねん!でもできないねん!」って逆ギレしたくなるし、闘病記モノの「死を目前にして悟る人生の素晴らしさ」的な至極真っ当なテーマには、「そんなこと知ってんねん!でも今はダラダラしたいんや!」って意味不明に開き直りたくなる。説教嫌いで現実逃避好き。超ダメ人間。そんなボクの天敵とも思われる、自己啓発に闘病記をくっつけた本が今大ベストセラーになっております。

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【無人島151日目】朝倉かすみ "田村はまだか" [BOOK]

田村はまだか

田村はまだか

  • 作者: 朝倉 かすみ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/02/21
  • メディア: ハードカバー

151日目。唐突ですが、「人を待つ姿」が好きです。待ち人フェチ。なんじゃそりゃ。例えば、渋谷ハチ公前とかで、恋人を待ちあぐねている女の子とか見るとゾクゾクします。ってちょっと変態っぽいですが、そうじゃなくて、誰かが誰かを待っている時の表情にグッときたりするのです。誰かを待つ、というのは、誰かを想う、というのに近いからでしょうか。相手が遅れていれば、心配したりいらだったり不安になったりしながら、目では絶えずその人のフォルムを探している。人ごみ溢れるターミナル駅で、ガラス張りの喫茶店のテーブルで、最終間近のひっそりとした改札口で、誰かを待っている人の姿は、いつもちょっと深刻でちょっと滑稽で、そしてどこか愛らしいのです。

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【無人島143日目】佐々木譲 "警官の血" [BOOK]

警官の血 上巻

警官の血 上巻

  • 作者: 佐々木 譲
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/09/26
  • メディア: 単行本

143日目。ボクは両親ともが教師だったこともあり、子供の時は「将来の夢は学校の先生!」などとほざいておりましたが、成長し自分自身がわかりはじめるにつれ、「いやいや、オレは人にモノを教えるようなしっかり者キャラではないな」と気づき、早々に諦めたワケです。賢明だったと思います。ただ両親からしてみれば、自分の仕事に憧れて、その道に進んでくれれば、そりゃうれしかったに違いなかろうとは思います。ごみんね、ちゃんと血を受け継がないで。しっかり者キャラに育てられたら、うっかり者キャラになっちゃいました。ワハ。残念。

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【無人島136日目】青野春秋 "俺はまだ本気出してないだけ" [BOOK]

俺はまだ本気出してないだけ 1 (IKKI COMICS)

俺はまだ本気出してないだけ 1 (IKKI COMICS)

  • 作者: 青野 春秋
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2007/10/30
  • メディア: コミック

136日目。前にもこのブログでちょろっと書きましたが、ボクは大学卒業後、勤めた会社を早々に退社し、7年ほど海外を放浪しておりました。同い年の友人たちが、日本でガツガツ出世していくのを傍目に、ボクは「自分のドリームをキャッチするんだ!」とかなんとか、ルー大柴的な台詞をお題目に、見知らぬ国の見知らぬ部屋で、「まだまだオレはこれからよ? ビックリすんなよ?」などと、鏡に映る自分を相手に、グダグダと酒を呑んで暮らしておりました。今では無事日本でマジメ(?)に働いとるわけですが、それでもボクは心のどこかで、今でもずっと思ってたりします。「俺はまだ本気出してないだけだ」と。

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【無人島125日目】田村裕 "ホームレス中学生" [BOOK]

ホームレス中学生

ホームレス中学生

  • 作者: 麒麟・田村裕
  • 出版社/メーカー: ワニブックス
  • 発売日: 2007/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

125日目。今年の「流行語大賞」の有力候補は、小島よしおの「そんなの関係ねぇ!」とエリカ様の「別に」だそうです。ほぼ同義語に近いこのふたつの言葉を一文にまとめてみると「別に。そんなの関係ねえし。つかウザイ」みたいなフレーズに仕上がります。この手の台詞は、多少の言い回しは違えど、古今東西問わず頭の悪い(←ひどい)若者の常套句で、大抵自分の分が悪く、上手く言い返すこともできず、というより自分の意見すらなく、でも負けを認めるのがイヤで、ちょっと凄んでその場を切り抜けようとしているだけの言葉です。かくゆうボクも若い頃は多用していたものでございます。

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【無人島118日目】川上健一 "渾身" [BOOK]

渾身

渾身

  • 作者: 川上 健一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本


118日目。横綱・朝青龍がモンゴルに帰る帰らんでゴタゴタしております。特に熱心な相撲ファンではないので、詳しい事情はよく分からんのですが、このゴタゴタにはなんか興味あるのです。表層的には「伝統と仕来りと体裁ばかり気にする老獪な日本相撲協会」VS.「強ければいいだろ?私生活まで拘束すんなよ!と反抗する礼儀知らずの外国人横綱」という図なんですが、見方を変えるといろいろな問題のエッセンスを含んでいるような。日本の国技とされる相撲というスポーツのあり方。海外で働く際の異文化間コミュニケーションの取り方。精神的ストレスを訴える者に、どこまで責任を追及していいのか。そもそもスポーツにおいて「礼儀や伝統」と「強さと実力」は、どちらを優先すべきか、などなど、いろいろなテーマを孕んでいるような気がするのです。

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【無人島114日目】サラ・ウォーターズ "夜愁" [BOOK]

夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4)

夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4)

  • 作者: サラ・ウォーターズ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 文庫

114日目。今のボクは、突然今のボクになったのではなく、過去の積み重ねによって今のボクになったのです。ってなんの話だ? 自分でもよくわからんのですが、誰かと出会う時、それはその人の一生のうちのほんの一瞬であり、そこに見えるその人は、過去の残像のようなものかもしれんのです。例えるなら、盲目の男が生まれて初めて象の体に触れた時のように、その人に関して理解したり知り得る範囲は実に少ない。過去のない人はいないし、その過去はすでに過去なのです。当たり前のことなのかもしれませんが、それは「人はいつか死ぬ」という真理にも似た、どうしようもなく残酷で、切ない事実だと思います。この本を読んで、ボクはそういうことを考えました。

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【無人島106日目】東直子 "とりつくしま" [BOOK]

とりつくしま

とりつくしま

  • 作者: 東 直子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/05/07
  • メディア: 単行本

106日目。先日、入院している友人を見舞いに、新宿にある大きな大学病院まで行ってきました。ボクは生まれてこのかた、大病も大怪我もしたことがなく、入院という経験がないのでうまく語れませんが、あの大きな病院の持つ空気っつうのは、独特なものがありますな。例えるなら、戦場になった国みたい。戦場も行ったことないけど。しかもドンパチやってるその現場ではなく、ドンパチが遠くに聞こえるくらいの距離にある街って感じ。どうしようもなく流れてくる「死」の匂いに怯えながら、誰もが平静を装いつつ、心で強く「生」を願っている場所。でもきっと願い叶わず、この病院で逝ってしまった人たちもたくさんいるワケで、そう考えると、古戦場や城跡などが持つ、静謐さと生臭さを感じました。病院で死ぬ人が9割以上と言われる昨今、いずれは自分もこの中に入ることになるのかと思うと、ただ見舞いに来ただけなのに、なんとも暗鬱な気分になったり。死ぬってなんだろう? 生きるってなんだ?

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【無人島104日目】若杉公徳 "デトロイト・メタル・シティ" [BOOK]

デトロイト・メタル・シティ 1 (1) (ジェッツコミックス)

デトロイト・メタル・シティ 1 (1) (ジェッツコミックス)

  • 作者: 若杉 公徳
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2006/05/29
  • メディア: コミック

104日目。得てして、その人が作る作品と、その人の「人となり」とは、全く別モノであることがあります。例えば、モノすごく簡潔かつ道徳的な文章を書く人にお会いできる機会があって、どんな人だろうとドキドキしてたら、すんごい話の長い世捨て人なおっちゃん(←失礼)だったことがあります。あと「あ、私、え、絵とか描くんです……」なんてモジモジしてる子の絵を見せてもらったら、岡本太郎バリに爆発していたこともあります。もちろんその人の中に、道徳的な部分や爆発的な要素が秘められているからこそ、作品にアウトプットされるんだとは思いますが、「あんた、全然キャラ違くね!?」って場合は意外と多いです。身近な例でいうと、普段はすごく無口なのに、メールだと絵文字使ってやたら饒舌、みたいな人って、周りにいません? 

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【無人島100日目】永沢光雄 "恋って苦しいんだよね" [BOOK]

恋って苦しいんだよね

恋って苦しいんだよね

  • 作者: 永沢 光雄
  • 出版社/メーカー: リトルモア
  • 発売日: 2007/01/26
  • メディア: 単行本

100日目。若い頃はいくら酒を飲んでも酔っ払わないので、周りの友達から有り難がられたり気の毒がられたりしていたのですが、ここ2〜3年ですっかりグダグダになってきて、最近は泥酔した上、いろいろやらかし feat. 翌朝ナニも覚えていない、という絵に描いたようなヨッパライ親父になりつつあります。仕事がカジュアルなので免れていますが、これでスーツだったら絶対に頭にネクタイ巻いているタイプだな、オレは。寿司折りぶらさげて千鳥足とかね。うーん。でもちょっといいかも、そういうのって楽しそう、って思っちゃう自分がなにより怖いです。

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