【無人島9日目】吉田修一 "パレード" [BOOK]
9日目。某SNSで知り合った、音楽と本の趣味がボクとドンピシャな「Kさん」の話は、以前の無人島でもお話ししましたが、Kさんの好きな作家の中でひとりだけ、ボク的には苦手な人がいて、それが「吉田修一」でした。以前「パーク・ライフ」って本を読んだことがあるんですが、正直「ダミだこりゃ」と思った。って話をKさんにしたら、「『パレード』を読むべし」とのアドバイス。つうかKさんのご推薦なら、ボクにとってはミッション。イエッサー! 即購入し、一気読み。
東京・千歳烏山の2LDKマンションで共同生活をおくる、20代の男女4人+18歳の男。一見仲良く楽しそうに暮らしている彼らが、実はそれぞれに大きな問題を抱えながら生きています。ひとりひとりを順番にフォーカスしていきながら、彼らの「闇」を浮き彫りにする小説で、2001年の山本周五郎賞受賞作。
途中までは、すごく快適に読めます。軽いし、面白いし、楽しい。でも半ばあたりから、なんか嫌な予感がしてくるんです。どうやら登場人物が全員「壊れてる」ことに気づき始めるんですな。5人それぞれが、1章ずつモノローグ的に語る構成になっているのですが、章を追うにつれ、どんどんその壊れ具合が増し、最後にはホラーばりのエンディングが用意されています。
ボクもある時期、男女4人の共同生活ってのをやっていたことがあり、ちょうど年齢的にも登場人物と同じくらいだったので、なんとなくこの小説の設定の「不自然さ」みたいなものが、よく理解できます。
毎日会ってるけど家族ではなく、気心は知れてるけれど恋人でもなく、一緒に住んでることによって、友達というカテゴリーでもなくなってしまった同居人たち。その気楽で希薄な関係。あの頃のボクたちの陽気さと、この小説の登場人物たちの表面的な軽さがよく似ている気がして、だからこそ後半はやたら怖かった。ボクの同居人も、こんなふうに胸に闇を抱えていたんだろうか? つうか、オレは?
角田光代の「空中庭園」の薄気味悪さにも通じる、上質なヒューマン・ホラーです。仕掛けも巧み。苦手意識も完全克服し、他の本も読んでみたくなりました。以上、ミッション完了です!さすが、Kさん。アイアイサー。
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